2017-01-01から1年間の記事一覧
戦後に起こった旅客機の墜落事件について、飛行船の事故調査に加わったことのある著者が提言を述べている。 過去の事故について「面白い」と言える不謹慎言葉ハンターの活性の低さが羨ましい。もちろん、現象と事故を切り離したコメントなのだが、国語力の低…
片山津について、中谷宇吉郎先生のおかげで詳しくなっていく。正しいかはともかく著者が描写する片山津の情景が脳裏に焼き付いてきた。祖母のおとぎ話にふるさとが生きているのと同じように、著者のエッセイに自分の中の片山津が生きている心地がして面白い…
著者の弟が土器に対して行っていた曲線を使った大胆な分類方法の研究について。あまりにもハードルが高すぎて形にならなかった研究の話は、なかなか耳に入ってきにくいものなので興味深い。 現代であればコンピューターによる情報処理で、もうちょっと何とか…
紆余曲折しまくっていた中谷宇吉郎氏の進路が分かる。田舎と都会の格差について実体験をもって語っている点も注目に値する。根本的には日本があまり変わっていない気がして残念な気持ちになった。やはり学習の機会格差はまずい(都会の人が田舎の生活を学べ…
ドライブをしていた我々は、危険なサメが泳ぐ湖にたどり着いた。先行して湖に飛び込んだ誰かが犠牲になったが、それを知らぬ気に湖岸を散策する。 すると、湖岸の護岸が眼球大の貴石を針金の籠に詰めてできていることを発見する。硫黄とガラスみたいな奴(高…
石川県の片山津にあった著者の家の紹介。呉服店として、それなりに大きな店だったらしい。被雇用者をふくめて14,5人の人がいて、食事のときはみんな一緒だったと言うから、現代とはずいぶんと家の感覚が違う。食事の内容は粗末だったとしても、全員で同…
化石というよりも立体魚拓の作り方が近いかもしれない。本物の化石についても言及はされている。すぐに溶けてしまい研究の難しいものを安定させて研究するための試行錯誤が見えてくる。便利であると同時に、実物そのものを見たい欲求も強まるんじゃないかな…
キーウィットキーウィットが耳につく。繰り返しの力を思い知らされる作品。同じ表現を重ねることを執拗に避けるだけが技術ではなくて、効果的に繰り返す選択肢もあるのだ。まぁ、比較的に子供向けなのは確かだろうけど。 異母妹のマリちゃんが母親の死を悲し…
簪を挿した蛇と同類の主張が展開されている。仏教宇宙世界の話は同一の体験と考えるべきか、何度も体験したことなので一種の編集を著者の脳内でされていると考えるべきか。 途中からはスタインが実際に体験した西遊記世界のお話になるので趣きが異なってくる…
寺田寅彦先生にみんなが勧められていた線香花火の研究を、夏の風物詩的に試みた著者の実験ノート。最終的に夏休みの宿題にするには難しいことをしてしまっている。火花の出現が火球の温度と密接に関係していて、放射温度計の測定によれば最初の860℃では火花…
イギリス留学時代に、フランス人の夫人が振る舞ってくれたサラダの味が忘れられない。夫人が行っていた秘密の味付けの正体がわからずに、訪ねまくったあげく海外留学をした次女のおかげで、ついに長年の謎が解け、昔味わったサラダが味わえるようになったと…
寿司なのにカブを使って米を使っていない寿司の話。麹は使っているか。北陸特有の料理についての知識が得られる。現代の食文化が画一的なものになってしまっていることが伺える。 また、寺田寅彦氏もかぶらずしが好きだったらしい。だから何?とも感じつつ、…
著者がハマったホッケの貝鍋について、短くもお腹の空く描写がされている。最初はあまり味がしないホッケだが、不思議と無限に食べられるらしい。 貝鍋から出てくるカルシウム成分が影響している可能性を著者は考え、知人に調べてもらって水に溶ける成分はあ…
割る者と悪者を掛けている?終戦直後にそんなダジャレを飛ばす余裕があったのか、どうか。終戦後の混乱状態を描いた貴重なエッセイ。日本人の足を引っ張るのは、かつての敵国だったアメリカ人ではなくて、自暴自棄になった日本人だという指摘が痛い。 略奪す…
中谷宇吉郎氏がおこなった雪の研究を一冊にまとめたもの。 日本人と雪の関わりについて述べた章もあり、雪国の人が大きなハンディを背負ってきたことがわかる。南国は南国で台風があるけれど。 近代的な除雪の研究でいろいろな成果が上がっていることが紹介…
子供時代に食べたおこげおにぎりを著者が回想する。本当に美味しそうで読んでいるだけでお腹が空いてくる。 今の子供には理解できないかもしれないと諦める前に、一度食べさせてみればいいのにと思ってしまった。 まぁ、多人数用に鍋でお米を炊く機会はなか…
アメリカ合衆国シカゴ近郊の冬は、緯度が同じ北海道中央部と同じくらい寒い。ただし、雪はあまり降らず、自動車事故対策のために除雪活動も熱心に行われている(1955年に書かれたエッセイで) クリスマスは家族で過ごし、お盆は若者が外に出てみんなで新年を…
オランダ人のディーケ博士が日本の夏の夜に浴衣で出歩くのが気持ちいいと思っていた日本の夏の夜は、熱帯夜が物凄く増えた現代の日本の夏の夜とは別物だったんだろう……。どうにも取り戻し難いものがある。過去の訪日客の手記を読んで日本に憧れてくる人には…
アメリカ合衆国シカゴの住宅事情を伝えるエッセイ。アメリカ式生活の肝は機械が設置された地下室にあると分析していて、地下室のない日本の住宅が電化製品だけ真似をしてもアメリカ式生活は再現できないとしている。現代でもこの地下室は有用に違いないし、…
1945年、北海道の冬。 よりにもよって大不作で春を迎えるまでの食料すら心配だった時代、著者の家族に娯楽を提供してくれたコナン・ドイル「ロスト・ワールド」の回顧。原著を片手に子供に日本語で語って聞かせるあたり、海外留学経験のある大学教授らしい行…
著者が入手した江戸時代の本をきっかけに、日本人に残っている非西洋科学的な姿勢「語呂の論理」について、論じた一片。陽イオン・陰イオンの議論について現代でも疑似科学界隈では元気な論理展開に思えて笑ってしまった(が笑えない)。 区別をするための記…
イギリス留学時に著者が経験したイギリス上流社会の様子。スイスのツーン湖ほとりにあるホテルで優雅な日々を過ごしている。うらやましい経験だが、イギリス人は付き合いにくい感じも……著者にはいろいろ良くしてくれているので複雑な心境を抱いてしまう。ア…
名声は身を助ける。だが、通じる相手と通じない相手で対応が激しく異なっているところが名声のあつかいの難しさである。もっとも著者には名声を利用するつもりはなくて――肩書は多少利用したが――偶然、泊めてくれた相手が著者を知っていただけである。 地方の…
日本海にも真夏はあるんだよな。どうしても冬のイメージが強い日本海の夏の魅力を、著者の少年時代の経験を元に描いた文章。サザエ(栄螺)やタコ(章魚)の漢字表記が読み慣れず、生態などの描写から読みが分かった。 子供心にみた海の美しさと恐ろしさが巧…
研究者によるギネス的な冬ごもりの話。半分以上、冒険家になってしまっている感じの研究者だが……アメリカの人は軍人でもあった。昭和12年のソ連の実験がアメリカの実験よりも詳細を公表している点が興味深い。公表して障りのない科学的なデータに関しては…
岩波文庫にくっついている創刊者の理念を謳った文章が単体となって、青空文庫に収録されていた。底本が、中島敦の山月記であることが最高にロックである。岩波文庫が生まれた当時の出版業界が抱えていた問題が伝わってくる。 今でもディアゴスティーニの耳に…
寺田寅彦氏が「線香の火を消してはいけない」と卒業する学生に語り聞かせていたことの述懐。研究に関係のない仕事についても、いちど研究に足を踏み入れたのならば、少しでも研究を続けるべきとのこと。働きすぎ時代にはつらい言葉であるが、当時も大変だっ…
ただひたすら雪の結晶を切り続けていれば、そのうち切れる。わけがわからない……この現象に起こったことを深く追求してほしかった。そうじゃないと学生が変わったときに引き継ぎができない。科学にとって再現性は大事。 雪の研究に関するさまざまな話を「聞く…
科学者中谷宇吉郎の意外な少年時代が語られている。仏教のお祈りを聞きながら宇宙創生をイメージしていたとは、ある意味で出来すぎである。そういえばSF作家の谷甲州氏も石川県在住だった。 中谷宇吉郎氏が暮らしていた町は大聖寺藩のお膝元であったらしく、…
寺田寅彦氏が別名で書いた短文「茶碗の湯」について、解説を行っている短文。 日常的な「茶碗の湯」は対流現象など地球規模の現象を説明する例として使うことができる。科学者の鋭い観察眼を感じさせるのは、複数の現象を取り上げているからだ。風に吹かれた…