線香の火 中谷宇吉郎

 寺田寅彦氏が「線香の火を消してはいけない」と卒業する学生に語り聞かせていたことの述懐。研究に関係のない仕事についても、いちど研究に足を踏み入れたのならば、少しでも研究を続けるべきとのこと。働きすぎ時代にはつらい言葉であるが、当時も大変だった予感がする。
 著者の何事も効率的な当時のアメリカでは2年で済む研究が、当時の日本では20年かかるとの意見が恐ろしい。10倍の密度で「努力」したら死んでしまう。線香の火はそのかわりに線香の火を燃やし続ける人間の積で少しは対抗したいというのが狙いになるのかなぁ。
 すっかり大学時代の研究から離れてしまっている我が身を反省した。本や博物館めぐり 程度はしていても、何かわずかでも進めるようなことはまったくできていないなぁ。



青空文庫
中谷宇吉郎 線香の火