語呂の論理 中谷宇吉郎

 著者が入手した江戸時代の本をきっかけに、日本人に残っている非西洋科学的な姿勢「語呂の論理」について、論じた一片。陽イオン・陰イオンの議論について現代でも疑似科学界隈では元気な論理展開に思えて笑ってしまった(が笑えない)。
 区別をするための記号であるはずの名前のもつイメージに引きずられてしまうことは「劣性遺伝」などでもお馴染みの問題である。欧米人は名前をつけるときにお決まりのもので良しとするが、日本人は意味を込めたがる問題にも通じるものがありそうだ。
 良くも悪くも切り離して考えることが苦手である。
 ユダヤ人研究者を追い出して、でっち上げられたドイツ物理学についての コメントで「最大限の配慮」をしている点が1938年の文章らしくて興味深かくも、おぞましかった。愚行を愚行とはっきり書けないとはね……。


青空文庫
中谷宇吉郎 語呂の論理