佐藤大輔名文集

自分には人として数え切れぬほどの欠点があるだろうことをかれは自覚していたが、誓いを違えることをそこにつけくわえることだけはできなかった。――RSBCパナマ侵攻2巻181−182P 素晴らしい。これぞ男の生き様って奴だろう。これだけでもなかなか…

平等などという妄想は、しょせん人生の調味料にすぎない。――RSBCパナマ侵攻2巻142P しょせん調味料。されど調味料。調味料があることで食べられる料理があるように、平等の妄想があることでいきられる人生もある。

本来、たいへん優美な印象のある艦なのだが、建造途中で続々と増備が決定された両用砲、機銃、電測兵装、とどめにほどこされた迷彩のおかげで禍々しさが増し、まったくの暴力装置にしか見えなくなっている。――RSBCパナマ侵攻2巻74P 元の姿を連想させ…

「当然だ。それがあなたの仕事だ。軍が国家を防衛して当然のようなものだ。その点について、わたしは毛頭恩義を感じるつもりはない」――RSBCパナマ侵攻2巻17P その当然が行われない国家・地域の何と多いことか!しかし、当然を当然と思ってありがたが…

「生き残るのに勇気はいらない。むしろ臆病でなければならない。いや、自分が臆病な意気地なしであると知ることこそ、本当の勇気といえるだろう」――RSBCパナマ侵攻2巻17P まったくその通りだが、本当の勇気ではないCICによって与えられる勇気がR…

「限られた時間の中でよりよい物を造るのは、限られた人生を有意義に生きるのと同じだ」――RSBCパナマ侵攻2巻16P これは素晴らしい名言だ。素晴らしすぎて皮肉が効きすぎ。有意義に生きると言いながら、人生に意味はないなどと言ってみたりもする氏に…

「髭は切るな、僕の髭は罪を犯していない」 ――中略―― このような男に同時代で出会えたとしたら、それは果たして幸福なのか不幸なのか。――RSBCパナマ侵攻1巻192P もちろん出会えたら幸運で、出会えなかったら幸運に決まっているじゃないか。ちまちま…

なにが良いのか悪いのか、さっぱりわからない。いかなる高邁な理想も銀行口座の残高に必敗するという真実いがい、共通するものはない。――RSBCパナマ侵攻1巻134P 南米情勢について。けっきょくは金か…しかし、金こそ本人たちにはどうにもならない可…

「われわれはあきらめない。誰も見捨てない。かれらはわれわれを信じている。ならばその信頼にこたえねばならない。そう誓ったのだ。わたしも君も。どうだ、思いだしたか?よろしい、ならば義務を果たせ」――RSBCパナマ侵攻1巻75P パトリック・ヒトラ…

「ああそうだ、ヴァルター、クリスマスおめでとう。返事をする必要はないぞ。君が口にした場合、反国家社会主義的意志の表明ということになる」――RSBCパナマ侵攻1巻46P ひねくれすぎなハインリヒのセリフ。自分は例外に出来て飄々としているいかにも…

かれには蹴落とすべき上官、こき使うべき部下はいる。しかし、友人はいない。一人もいない。常にそうだった。――RSBCパナマ侵攻1巻42P ハインリヒについて。それが必ずしも不幸であったように思えないキャラクターであることが深い。ライフスタイルど…

奇妙なことに、さきほどまであれほど大きな喜びを与えてくれた光景が、かれの不安感をさらに強めた。――RSBC死戦の太平洋2巻211P 人間は風景を自分の心の鏡としてみる。だからこんなことが起こるのだろう。どちらの予兆も常に転がっているものだ。

大いなる恩寵。なんと心地よき響き。 恩寵こそ我が心に畏れを教え給う。恩寵こそ我が心の畏れを消し給う。 数知れぬ危険、そして誘惑の罠。我はそこより抜けだし得たり。 主は我に約したり。彼の言葉は我が守る、我が命ある限り、彼は我が盾にして妙薬なりと…

「いかなる困難と苦痛にもめげず、不屈の闘志でもって任務を果たし続けた男を批判できる者などこの世にはいない」――RSBC死戦の太平洋2巻207P いや、ひとりだけいるんじゃないかなぁ。本人さ。本人だけは自分のやった事に満足せず、口にはしなくても…

敵がどこにいるかわからぬだけではなく、誰が敵かもわからぬ場所では、結局のところ、すべてが敵という結論に到達してしまう。となれば狂うより他になくなる。――RSBC死戦の太平洋2巻204P ベトナムで米兵がよく起こしていた心理状態だが、戦場ではけ…

こめかみに血管がうき、頬の傷跡が微かにひきつっている。海賊と銀行の幹部社員を兼業している人間がいるとするならば、いまの清水のような見かけになるだろう。――RSBC死戦の太平洋2巻191P これも具体的に想像できてひどく笑える。銀行の幹部職員な…

「気に入りませんな、効果は認めますが」パウルは言った。「どうにも世紀末的な気分になります。健全な兵器じゃありませんよ」 「戦争さ、ギースラー。戦争だよ」ラングカイトは言った。――RSBC死戦の太平洋2巻178P 戦争行為をするに当たって最高の…

かれらの任務は――要するにリトマス試験紙。敵が防御力を維持していれば赤く染まる。もっとも、染まるのは人間の肉体だが。――RSBC死戦の太平洋2巻176P 非常にきついジョーク。しかも、リトマス試験紙はなじみのあるアイテムだから、妙にイメージしや…

「“汝ラ、カレラヲ忘ルルコトナカレ”」 わずかな沈黙があり、やがて悲鳴のような信号手の応答があった。 「イエス・サー!」――RSBC死戦の太平洋2巻142P そんな命令ありかとか、でもイエス・サーなのか、とか突っ込んではいけません。戦争さ、菅沼く…

復讐心は人間に狂気を許容させる。――RSBC死戦の太平洋2巻129P そして際限なく復讐の輪は広がっていく。だから狂気を許容しても狂気に支配されてはいけない。

これこそが最大の危機であった。牧羊犬は次々と傷つき倒れ、羊の群は狼の群へとさしだされている。狼たちは喉の奥から血も凍るような唸りを発していた。 そしてかれらの牙はすぐに剥きだされる。――RSBC死戦の太平洋2巻108−9P 実にイメージしやすい…

「どうされますか」矢沢は言った。 「是非もなし」真田はこたえ、これからおこることに備えてだろう、第三種軍装のネクタイをゆるめ、シャツの袖をまくりあげた。かれなりに、“戦争危険”に対する保険をかけたというわけだった。――RSBC死戦の太平洋2巻1…

優れた釣り師に気の長い者はいない。おおらかに見えるかれだが、こんな時だけは着発信管なみの性格になる――RSBC死戦の太平洋2巻91P 実際のところどうなのだろう。常に成果を求めて発火寸前の精神で入るほうが多くの釣果を得られそうではある。たくさ…

けして英雄的な情景ではなかった。乗員たちも同様であった。本人たちもそのつもりだった。 しかしこの日、かれらは英雄となる定めを与えられていた。――RSBC死戦の太平洋2巻82P 気負いのないところに真の英雄は生まれる。それでも本人たちは英雄とな…

「諧謔を楽しむには理性に裏付けられた知性が必要になる。しかし、楽屋落ちで笑うのに知性はいらない。むろん理性も。幼児的な感性さえあれば良い」――RSBC死戦の太平洋2巻67P なんというか、週刊少年サンデーのギャグ漫画担当編集に聞いていただきた…

“いいかい君、戦地での死に方は八百万通りある。ドイツ兵に殺されるのもその一つだ。しかし残りのすべては君自身の不注意が原因なのだ。覚えておきたまえ”――RSBC死戦の太平洋2巻63P 某藤堂氏のアドバイス。どこまでが注意のおよぶ範囲で本人の能力で…

正直なところ、そちらの“撃墜数”もたいしたものになっていた。そのためか、現在のかれは、現状に満足して良いものかどうか判断のつかない、中途半端な日々を送っている。人はパンのみに生きるわけではないが、パンが無ければ死んでしまう、そんなところだろ…

<第一誠丸>船長はただひとこと「もう、あかん」と故郷言葉でつぶやいたのだった。人間の限界を示すこの言葉に対し、菅沼はまともな対応ができなかった。なぜ自分がこのような言葉を耳にせねばならぬのかと思った。あまりにも残酷だ。あまりにも。――RSB…

自立した個人とは、自分がこうありたいと望む姿を他者の前で演じとおせる者のことを言う。この瞬間の菅沼はまさにそうした人間であったかもしれない。すくなくとも当人はそう信じようと努力している。――RSBC死戦の太平洋1巻104P 人間には演技力が必…

人並みにひねているつもりではいたが、とても、エヴェレット・ヒースとはくらべられない、そう思った。むろんかれは、自分の本当の人生がようやく開幕したばかりであることに気づいていなかった。――RSBC死戦の太平洋1巻80P 人生経験はただ人を歪めて…