戦争と気象学 寺田寅彦

 遠距離の航空攻撃がおこなわれる時代においては、敵地の気象情報をえることが大切である。現代においては常識になっていることを著者は鋭く指摘する。広島に原爆が落とされたのは「当日に晴れていたから」なのだから、気象が国家に与える影響はえぐいほどだ。
 ドイツ人は用意周到で、イギリス人は泥縄だと言われているところに、ステレオタイプの歴史を感じた。ドイツの周到さは著者の想像だが、第一次世界大戦では同盟国だったイギリス側は実例をあげてのことだからなぁ……。
 偏西風の影響を考えると、西側にある国が気象予測において有利と考えてみると面白い。現代は気象衛星があって良かった。


青空文庫
寺田寅彦 戦争と気象学