日本再建と科学 仁科芳雄

 敗戦直後、茫然自失の状況にあった日本において、物理学者の著者が描いた復興への道筋。科学が先か、科学研究を可能とするための経済復活が先か、多少前後関係が怪しくなっている部分があった。まぁ、現状でも可能な研究については動いておこうと勧めているとおり、個人レベルで判断すれば矛盾は起こりそうにない。
 原爆に対して積極的とも受け取れる記述があったことが、まだ原爆への評価が定まらない時代ということも反映していそうで、興味深い。放射能の恐ろしい影響については、どれくらい把握していたのだろう。
 寺田寅彦中谷宇吉郎を読み慣れたせいで「科学者の割には」文章がやや読みにくいと変なことを考 えてしまった。いつのまにか青空文庫のせいで科学者の文章の平均点を現実よりも高くみてしまっている。


青空文庫
仁科芳雄 日本再建と科學