地図をながめて 寺田寅彦

 陸地測量部の仕事を寺田寅彦氏が顕彰する。非常に孤独で忍耐のいる仕事が地図に反映されていることが分かる。
 現代の地図は航空写真や衛星写真を利用しているはずだが、実地踏査がなくなったわけではない。それに昔からの情報が反映される部分もあるはずで、やっぱり先人の恩恵をこうむっている。
 陸地測量部の人を主人公にした作品が読んでみたいと思った。敵地に潜行しての調査はスパイそのものだったらしいが、あえて国内での苦労がいい。剱岳での測量部より先に修験者が登っていて、錫杖がみつかった件について、説明不足気味に書いてあった。


 後半は地下都市のススメになっていて、新世紀エヴァンゲリオンを連想する。それくらい実現性が厳しい提言であった。コストも掛かるし、日光浴ができないと健康に悪影響が出る。定期的に地上の公園に出てもらうためにもエレベーターの完備が求められる。
 しかし、爆撃対策で施設を地下に隠すことについては、アメリカを敵に回した各国で進められている事でもあり、著者の先見性が光っていた。


青空文庫
寺田寅彦 地図をながめて