天災と国防 寺田寅彦

 第二次世界大戦中の大地震を予言したかのごとき締めに鳥肌が立った。航空機産業にとっては戦争末期に起こった2つの地震がトドメの一撃になったかもしれないからなぁ。著者のアドバイスでどれだけ被害を減らせたのか、気になるところだ。
 台風の情報を得るためには日本列島上だけではなく、太平洋上や日本海、大陸やオホーツク海にも観測地点が必要だと述べられている。出現して南から来るのだから太平洋上だけでいいんじゃと思ってしまった私は甘い。台風の進路を予想するためには著者の書いたとおり大陸側の高気圧勢力を正確に把握していなければならない。洪水が起きたときの被害を予想するために、地形の高低を調べておくみたいなものだな。
 高度に複雑化した社会は大災害で致命的なダメージを受けるとの指摘は、東日本大震災を思い出しても頷けた。ただ、狩猟採集民なら大災害を受け流せるとの指摘はどうなのだろうか。記録が残らないだけという可能性も考慮しておきたい。


青空文庫
寺田寅彦 天災と国防