国際学術会議への旅 仁科芳雄

 ジャンボジェットのない時代に日本からヨーロッパまで行くのは大変だった。ともかく着陸が多くて検査などで1時間は待たされる。当時の旅行事情が分かる。19時間の待機があったインドで精力的に活動していて、著者の高いバイタリティを感じた。日本の代表をやる科学者ともなれば、そうとうタフでなければ務まらない。
 国際学術会議が開かれるデンマークの首都コペンハーゲンに到着してからは、著名な物理学者ボーア氏のお世話になっている。いろいろな点で別世界の出来事のようだ。
 若い世代が育っていなかった(戦死した人も多そうだ)ドイツの科学復興が危ぶまれていたが、今になってみれば日本も同じくらいの 危機感をもってほしかったと思ってしまうのだった。


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仁科芳雄 國際學術會議への旅