シグルイWWⅡ 太平洋戦争ふたたび


黒島が心の平衡を取り戻すのは秋から冬にかけてが最も多く
持続時間は長くて半日そのわずかな期間に連合艦隊の活動方針を示唆するのだ
「五航戦め。ようやく器が整いおった…」


「宇垣…連合艦隊の旗艦、大和と武蔵いずれかの?」
「武蔵かと」
「なにゆえ」
信濃は空母に改装されておりますれば」
「面を上げい」
「今、何と申した?信濃が何だと?
 あやつさえ戦艦(まとも)も生まれておれば……今頃…
 申せ。わしは大和、武蔵いずれが強いフネかと尋ねておる」
ブク ブク
「互角か互角と申すのだな」


「独逸のZ艦隊の申し子はたしか双子であったのう
 あれと大和、武蔵を実弾で仕合わせい」




水雷戦隊が変針したら用心せい』
クラッチレー少将は教本の言葉を思い浮かべた。
何が出来るというのだその間合いから
遠い!遠すぎる
「司令」
「遠い。かすりもせぬわ。かすりも…」
日本海軍に「酸素魚雷」と呼ばれる特殊な"魚雷"がある!
遠間から放たれた雷撃の一閃の最中、魚雷の機関は空気から純酸素まで変化していたのである。
射程は予想以上に伸びていた。
精妙なる射角の調節が出来なければ魚雷はあらぬ方向へ飛んで行ったろう。
酸素魚雷」は日本海水雷戦隊の秘伝であり合同演習で使用することは禁じられている。
重巡シカゴが討たれた時、僚艦キャンベラにも異変が生じた


日本海軍は最小の雷撃で斃す
三発叩き込めば戦艦さえ沈むのだ