九谷焼 中谷宇吉郎

 加賀の名産品である九谷焼について、著者が思い出を語る。古九谷と工業生産品の間にある見落とされていた九谷にについて知ることができる。明治維新による悪影響は九谷焼にも及んでいたのか。(末端は?)ともかく古いものをぶっ壊せばいいと思っていたみたいだから浅はかである。
 著者が小学校に通うために下宿した絵付け職人浅井一毫氏の、龍の絵に対するコメントが深い気がした。
「竜は雲があるから描けるので、頭から尻尾(しっぽ)まで描けといわれたらちょっと困る」
 想像上の動物らしい認識のされかたである。
 著者の父親の九谷焼に掛けた謎の情熱も印象的である 。異常に根気強い彼がもう少し生きていたら何を成し遂げていただろう。


青空文庫
中谷宇吉郎 九谷焼