実験室の記憶 中谷宇吉郎

 著者にとっての実験室の思い出を語る文章を想像していたら、実験室に宿る記憶というオカルティックな話題になってビックリした。蟻の集団がひとつの意思をもって動くかのように、実験室がひとつの目的に向かって最適化されると解釈すればオカルトではないのだが……しかし、科学がこういう背景の上に存在しているのであれば、最新設備を大量に導入するだけでは成果があげられないことも良く分かる。
 この文章が書かれた1942年の時点では油拡散ポンプは普及していたなど、真空技術の歴史について伺うことができる点も興味深かった。さらに著者がイギリスのキングスカレッジで経験したのは一世代前の水銀を使った真空技術である。


真空技術〜発展の途を探る 辻泰・斎藤芳男 アグネ技術センター | 読書は呼吸


青空文庫
中谷宇吉郎 実験室の記憶