軍用鮫 海野十三

 軍用鼠を作中作にして――そもそも軍用鼠自身も作中作であったのだが――生み出された軍用鮫の顛末。爆弾犬の結果を思い出した。せめて敵味方の船、すべてを沈めるべきではないか。単純に艦隊を全滅させたわけではなく、それが最後の艦隊ではリカバリーは不可能に近い。調教のご褒美を考えると乗組員も全滅しているだろうな。ぞっとする。
 そんな惨状でも毅然とした楊博士の態度が、空気の読めない研究者らしくて、実にコミカルだった。


青空文庫
海野十三 軍用鮫