やがて、かれの視線は、自分がこれまで指揮していた一式改中戦車に釘付けとなった。砲塔が半壊し、車体前部が敵戦車の転輪と側面へ食い込んだその姿は、凶暴な小動物の死体のようだった。みずからに数倍する敵の喉笛に噛みついたまま絶命した哺乳類の祖先。――RSBC7巻149P

 凶暴きわまる生存本能の暴走による自滅攻撃。その野性的な激しさを物語る描写。だいぶあとに「今こそ戦争は退化しました」というセリフがでてくるが、この時からそれをかなり感じさせる。
 というよりも戦争は一部で人間を退化させなければできない社会活動なのであろう。同時に社会は確実に進化させられることが恐ろしい。退化は進化の一種と突っ込むよりも、個人の退化が社会の進化である可能性に恐怖する。