千里眼その他 中谷宇吉郎

 かつて日本社会の流行病となった千里眼騒動を思い返す。水素水などのことを考えれば、日本人があまり進歩していないことがわかる。流石に全く同じものでは騙されない気がするけれど、仕掛けるほうが巧妙化して当時の日本人みたいに「騙されたい気持ち」が高まれば危険は常にある。
 千里眼を持っているとされた女性二人が、急死や自殺に至っていることがまた恐ろしい。彼女たちを表に立てて儲けた連中はのうのうと生き延びたんじゃないかなぁ。吐気がする話だ。
 付記にあった「日本式製鉄」はアルミを犠牲にして鉄をえるバカバカしい方法。何かで応用する機会がないかとは思ってしまうが、大量生産に使えるなんてこと は絶対にない。こんな馬鹿な計画で国力を浪費していたとは戦争に負けるはずである。


青空文庫
中谷宇吉郎 千里眼その他