増田お嬢サバイバル部番外編 お嬢の往生際

 縦ロールお嬢様は偉そうな顔で――いつも偉そうな顔をしているが――言った。
「やはりBLは向きが大切ですわね」
 おさげのお嬢様が相づちを打つ。
「まったくです。向きが逆になっていたら憤慨ものですわ」
 丸めがねのお嬢様が提案する。
「いっそ、前後から挟む手もあります」
「「前後から!?」」
 お嬢様たちは色めき立つ。
「それは贅沢ですわ」
「棒が余計にいりますわ」
 丸めがねのお嬢様はつるを摘みあげて反論する。
「でもそれならピストン運動にも耐えられますわ」
 おさげのお嬢様がうんうんと頷いた。
「しめつけの力がキープできますものね」



 話を聞いていたセミロングのお嬢様はおずおずと口を挟んだ。
「あの……Oリングのバックアップリング(Back-up ring)はBLじゃなくてBRじゃないですか?」
「「!!」」
「ド、ドイツ語でエルと言ったのですわ」
「都々逸?」とポニテさん。
(嘘ですわね)(往生際が悪いですわ)
 それ以上、追求しない優しさが増田お嬢様たちの間にも存在した。自分たちが気づかなかったことを棚上げにするためである。
 セミロングお嬢様はポツリ。
「ドイツ語ならバックアップリングはStützringeでは……」
 訂正、存在しなかった。



 縦ロールお嬢様は顔をくしゃくしゃにして姫カットお嬢様に泣きついた。
「そうですわよ!わたくしの言い間違いですわ〜」※知識の間違いを口の間違いに矮小化させている。
 お嬢様たちは揃ってサバイバル大会の覇者を弁護した。
「言い過ぎですわ」
「逃げ道は残してさしあげませんと……」
「工程会議の鉄則ですわ」
「見解書を提出ですわ」
「根拠はなんですの?根拠は?」
 担当者だけとの打ち合わせと思っていたら、ぞろぞろと集団が出てくるアレである。
(私が悪いんですか!?)
「気にしなくていいよー」
ポニテさんに心を読まれている事が気になります!」


Oリングとバックアップリング【Oリング・パーフロの桜シール】
増田お嬢サバイバル部反省会 - それでもハンニバルは進む
[増田お嬢サバイバル部]1