黒い月の世界 中谷宇吉郎

 ハワイ島のマウナ・ロア山頂で雪の研究をおこなった著者によるエッセイ。そこそこの冒険要素もあり、マウナ・ロアの素晴らしい景色の描写にはセンス・オブ・ワンダーを感じた。
 肝心の雪はなかなか降らないのだが、別の研究をやっていたり、高山ゆえの苦労の話があったりして関心は尽きなかった。地学で習ったアアとパホイホイの溶岩が、説明されていたところも興味深かった。富士五湖で観たときの記憶が蘇ってきた。
 それにしても研究者はタフな人たちだ。世界中を飛び回っても気力が尽きることがなく、むしろ好奇心をかき立てられ続けている。ユニークなムニタルプ(Munitalp)協会の存在も愉快な気持ちに させてくれる(が、Munitalpの単語はゴルフウェアメーカーに検索汚染されていた)。


青空文庫
中谷宇吉郎 黒い月の世界