一度暖炉で火傷をした犬は決して暖炉に近づかない。
 暖炉に近づくのは、暖炉の中に焼栗があるのではと思う者たちだけで、その甘さを忘れられないからに他ならない。
 どんなに辛いことが待っているだろうと予想ができても、あるいはそこにはなにもないかもしれないなどと思っても、それでも手を伸ばさずにはいられない。
 それは期待しているからだ。
 その先になにかがあると期待しているからだ。――狼と香辛料5巻344−345P

 ちょっと長いけれど、何度も使用されて印象の強かったモチーフなので。記憶を持つだけ人間のほうが動物よりも愚かになれることがあるのかもしれない。
 愚かになるのも人間の特権だとしたら望んで愚かになるのも一興かもしれない。