アウトレンジっ アウトレンジっ
 劣勢の機動部隊指揮官である、小沢治三郎が時折このような妄想にふけるのを見て見ぬふりをする情がGFにも存在した。
 紺碧の海マリアナ沖を血に染める猟奇事件"ターキーショット"の幕開けであった。


 直掩機にてアウトレンジ攻撃を封じると同時に小沢艦隊があるべき位置に潜水艦が伸長している。ニミッツの信頼を勝ち得たスプルーアンスに一切の死角はない。


 開戦前まで戦艦こそが海軍の主戦力とささやかれていたことを何人の軍人が覚えていよう。


 ハルゼーの鼓動は早まり生ぬるい汗が全身を伝わった。
 己がまんまと策にはまりフィリピンを離れるべく陽動されたことに気付いたのだ。


 敵空母部隊が目の前に!いかなる時も冷静な宇垣中将の瞳がこの時ばかりは燗と輝いた。


「扶桑・山城は老いていた……それだけのことよ。日本海軍に勝ったと申したければ大和に勝たねばならぬ」
「大和?その戦艦は友軍が大変な時にどこかで反転しなすったという話ですよ。そんな艦に……」
 がっ
「ヒィィ」
「うぬが如き下郎に栗田提督の何がわかる!?」